こんな悲しみと苦しみを経験しなければならないんだろうか。
生きることの喜びを教えてくれた人を突然失うという苦しみ。
その苦しみを乗り越えても、その先にはただ夫のいない世界が広がるだけ。
こんな運命が夫と私を待っていたなんて。
3年前はただ幸せに暮らしていた幸せなカップルだった。
礼儀正しく人に迷惑もかけない穏やかなカップルだった。
何も悪いことしてない。夫なんて日本の中で一番くらいに何も悪いことしてない。
それなのに、こんな命の終わりを迎えるのか。こんな運命なのか。
今日の私の歯止めの効かない悲しさは、アパートの整理とつながってるんだろうか。あの場所が苦しいけど、あの場所が恋しい。この世から消えていく夫の跡が、あの場所にはまだある。荷物が運び出されてがらんとした部屋で、今日わたしは残された床に抱きついていた。あの場所が私たちの結婚生活の最後の日々だったんだ。永久に続くと思っていたのに。おじさんになっても、おじいさんになっても、ずっと大好きだと思っていたのに。あの場所がなくなると、思い出せる場所がなくなってしまう。夫の一挙一動を思い起こさせる場所が消えてしまう。もう目の前にいるかのように等身大の夫を思い出せる場所は他にない。でも、それを考え始めたら私がいつまでもアパートの期限を延ばすから、それだから今日夫はアパートから出て行ったんだな。うまくできてる。
夫を失ったことが苦しすぎて、自分の中でなにかスイッチが入ってしまった感じがある。涙とこみ上げる悲しみが前は毎時間だったのが、今日は10分ごとにある。夫がこの世にいない事実に叫びたくなる。もう喚き散らしてそこらじゅうのものを投げて壊して自分も気づいたら命を投げ打っていたい。だんだん、夫が亡くなったということの実感が自分にでてきているのだろうか。その実感は、恐怖で悲劇で絶望。受け入れ難くて頭がパンクする。
どれだけ大きな宝物を失ったか、その実感が日に日に大きくなっている。この状態が苦しすぎるから、人は後を追うか、諦めて割り切るか、あるいはそのまま思い続けて心の病になっていくのだろうか。
夫のいない世界は嫌。それだけ。そんな中で生きたくない。それだけ。早く夢の続きを夫の近くにいって楽しみたい。それだけ。
早く夫の隣におしゃれして座って、2人でたくさん笑いたい。