夫くん名誉賞

夫が元気になったら、一緒に見返したい人がたくさんいた。

私たちが苦しんでいるときに冷ややかな目で見てきた人、差別的な言葉をぶつけてきた人、非難してきた人、距離を置いたり、逃げていった人。どの人も、みんな顔には誇らしげに「常識人」って書いてあった。

屈辱的な思いをたくさんして、それでも反論もできなくて、ただ反応しないということをし続けた2年間だった。私が反応することで、相手のネガティブな感情に油を注ぐと思ったし、私はとにかく夫のことに集中したかったから。

こういう人から見て、私や夫には、人権なんてなかったと思う。人権がないって表現、初めてしたけど、その通りだな。明らかに、人権がなかった。

当たり前のことだけど、本当に信頼に足る人、それは家族であっても、友人であっても、同じだと思う。私たちが一番苦しい時だって、一番元気なときだって、いつだって変わらず連絡をくれる人。そして、一番苦しい時には、苦しんでいることを責めずに、労ってくれる人。

世の中はそんな人ばかりじゃない。それは、これまで緩やかに信頼していた人々の中でさえも、くっきりと分かれることに気付いてしまった。

本当は、誰だって間違いがあるから、そんな分類を自分の中で消してしまえれば良いのだけど、自分が一番苦しかったときに、刺すようなことをした人には、やはりもう近づかなくてよいのだと思う。きっと、その人はこれからもそういうことを繰り返すから。

しかも、夫が元気になってくれれば、2人にまた幸せが訪れることは疑いようがなかった。だから、そんな器の小さな周囲の人間のことなど、本当はどうでもよかった。そういう人間は、そうやって弱い者をいじめて、平凡でつまらない人生を潤わしていれば良い。それか、こちらが反論しないことを知っていて、傷つける言葉をぶつけて思い通りにいかない人生の鬱憤を晴らしていれば良い。でも、願わくば、彼らを許した上で、どうでもいいと思いたかった。

こんな気持ちを話し合って、わかり合って、励まし合って、ホントにうちら、よく頑張ったよねと言い合えるのは、夫しかいなかったのにな。本当に、本当に、よく耐え抜いたよねと、お互いへの信頼を一層深めるはずだったのに。

私、こんなに誰かを守ろうと思ったこと、ないよ？

こういう周りの人々を見返すこともできないまま、夫はくだらない非難や差別や批判を受けたまま、世間に誤解をされて亡くなってしまったように思う瞬間がある。

でも、今からでも夫の名誉を取り返したい。

このブログだって、やっぱりそういう気持ちが強い。

夫くんは何も悪くない。

夫くんほど優しい人はいない。

夫くんの素晴らしさを、いろんな人に伝えたい。

人は、こうあるべきだとたくさん教えてくれた夫くんを、私1人になっても讃えたい。

それが、私にできることなんだ。