世の中にはあらゆる需要があると期待して、私が編み出したエア・ハグの方法を書いておきましょう。エア・ハグでは、恋しい相手の洋服に抱きつくことで、まるでハグしてもらっているような感覚を得ることができます。あくまでも相手に抱きつく専用で、相手を抱きしめる効果はないので、注意してください。
まず、大好きなのに会えない人を思い浮かべてください。
ちょっと頑張ったら会える人ではうまくいきません。
明日にも会えるものの、今この瞬間に恋しすぎる相手でも良いでしょう。
その大好きな人の洋服を準備します。必ず厚手なものを選んでください。生地は厚みにして1センチ以上を推奨します。シャツ類などの薄手なものは残念ながら効能が期待できません。
おすすめはセーター類ですが、スマートな薄手セーターではうまくいかないでしょう。メリノよりも、モヘアなどがふんだんに入ったモコモコとしたものや、アラン模様などで嵩があるものが良いでしょう。
思うような服が手に入らない場合、コートを使用することも一案です。コートは必ずボリュームがあるので、厚みはクリアすることができます。普段、コートを着てハグをしていたかによって、リアリティの体感に個人差があるかもしれません。
服を用意できたら、広めの壁を探してください。よくハグをしていたエリアがあれば、その近くの壁を選んでください。思い出と現在が混ざり合い、高いエア・ハグ効果が期待できます。そのようなエリアに現在アクセスがない場合は、頭の中で昔の場面を思い出すと、類似の効果が得られます。
壁を決めたら、先ほどの服を壁に掲げて、位置の調整をします。相手の背丈を勘案して、自分の目から見て正しい位置に服の肩の高さをセットします。この時、服をハンガーにかけて、壁に固定できると最も高い効果が発現されます。多少背丈の正確さを犠牲にしても、ハンガーを壁にかけられる場合は、迷わずかけましょう。ハンガーがなくても、なんとかなるので、このまま進めましょう。
それでは、高さ調整した服に自分の体を合わせるように立ちましょう。そのまま壁にこれ以上近づけないほどに近づきます。すると、服が壁に固定されることでしょう。服の両腕は垂れ下がったままなので、これを片腕ずつ、自分の首にマフラーのように回してください。するとどうでしょう?まるで、服を着た相手に抱きしめてもらっているような気がしませんか?
この時、壁に向かって真正面を向いていても良いのですが、首だけ右を向くと、相手の腕が自分を包んでいることをより実感できることでしょう。何より、涙がでていたりすると、正面を向くことで服が濡れてしまうので、ご注意ください。
なお、冒頭に書くべきでしたが、エア・ハグは相手の服に顔と体を埋めることで、ハグされている感覚を求めるものです。相手の背丈が自分よりも低い場合は、服に顔を埋めることができないので、十分な効果が得られない可能性があります。そのため、あくまでも抱きつき専用で、抱きしめは対象外としています。
以上、少しふざけて書いてみましたが、筆者はこれに大真面目に取り組んでいます。もし、愛する人が恋しくて気持ちが苦しい方がいれば、ぜひお試しください。(了)