優しくて可愛くてかっこよくて大好きな夫と死別しました

事故か自死か。夫が消えた人生をこれから歩みます。なんて自分が書いてることが信じられない35歳です

アパートを出る

退去退去詐欺の私も、本日が正真正銘、アパート最終日。

ガス立ち合いも完了。もうあとは部屋をあとにするだけ。夫が気持ちがつらいときによく座ってたリビングの窓の隣に、私も座ってみた。強烈な日差しが差し込んでるから画的に綺麗で、切ない感じが満載。この状況、すごいなー。侘しさすらあって、なんかのドラマとかで使えそう。そこでふと心霊写真でも映らないかなと思ってケータイのカメラを立ち上げたんだけど、1枚目に撮った自撮りの中の自分の顔がすごかった。魂抜けて、「平」って感じの顔。もう、苗字は平さんでいいかも。眉毛も目も口も、全部、平で、無って感じ。そうか、こういう顔してるんだ。

亡くなった直後、ここに来るととても苦しい気持ちだった。でも、夫が亡くなって半月ほどした頃から、だんだん夫に包まれてるような気持ちになることが多くて、なんか気持ちが少しホッとしたり、ぽかぽかする感じがある。なんでだろ。

実家だと気分が紛れることが多いけど、長い時間紛らわせていると逆に苦しくなることも多い。ここにいると、夫のことをずっと考えながら、生活もできるから、ちょうどよいのかもしれない。今の状態にあった、等身大の自分で、夫と息をしている感じがある。うん、そうだ、ここに来ると、まだちょっとだけ夫がいるような気持ちになる。それで、夫の温かさを感じる。自分が家の中を歩きまわりながら、夫の姿を思い浮かべて、ちょっと安心する。

引っ越しが決まってなければ、こんなに急いで退去はしなかっただろうな。ここで、夫が生きてるような心持ちでしばらく暮らすのもアリだったのかな。でも、もう夫が亡くなる前から決まってたから、改めて延ばすようなパワーもでなかった。大体、私はこのアパートがずっと嫌だったのだから、こんなぽかぽかした気持ちになる自分なんて、想像できるわけなかった。今だって、退去が決まったからそう思ってるだけかもしれない。またご近所さんに会ったら、すぐに飛び出したい気持ちになるだろう。

 でも、明日からは、ここに来たいと思っても、来れないのか。私はとてもおセンチ人間で、情がまるごと人になったような人間(だと自分で思っている)ので、こういう「今後一切XXできない」系の話には、めっぽう弱い。昔から、出会いと別れの時には、そんなことで頭がいっぱいになる。しかも、今回はその特大号だ。これまでの出会いと別れを全部足し上げても、100万分の1くらいにしかならないくらい、そんな特大の別れだ。夫の服に抱きついて、夫にハグしてもらった気持ちになるのは、この部屋以外、ない。だから、夫にハグしてもらえるのだって、今日が最後と思ってしまう。もう、ハグしてもらったのなんて、とっくに最後の一回は終わってるから、そんなことは思い込みなんだけど。

日が陰り出すまでここにいてしまうと、きっとどんどん気持ちが重たくなって、最終的に帰れない状態になってしまうから、そろそろ出ないと。気持ちを切り替えて、出ないと。寂しい寂しい寂しい!寂しくて辛い。悲しい。自分を救いようがない。けど、出ないと。