優しくて可愛くてかっこよくて大好きな夫と死別しました

事故か自死か。夫が消えた人生をこれから歩みます。なんて自分が書いてることが信じられない35歳です

パジャマを着たおばさん

夫が亡くなってから、数えるほどしか外出していない。私は毎日、実家の超セーフティゾーンの中で、パジャマ姿で暮らしている。夫が生きている時は、可愛いって思ってもらいたいから、なんだかんだおしゃれしたり、化粧をしたり、夫が良いと思ってくれそうな出で立ちでいた。でもね。今は実家だし、誰も見ていないので、全くその需要がなくなった。外出すれば良いというわけでもない。何度か電車でアパートまで行ったけど、その時も、スッピン。最後に気合を入れてお化粧して髪型整えたのは、夫の葬儀のときだ。それ以来、まさに療養中の人にふさわしい格好をずっとしている。

そういう生活習慣は、表情にも影響するのか、今日鏡で見た自分の顔が、とてもブサイクだった。元から器量がいいわけじゃないけど、ブサイクって思ったのは、けっこう久しぶりだった。しかも、そのブサイクぶりにびっくりした。だいぶブサイクだな、と。

夫に出会う前、こういう感情って、あったかもしれない。そして、夫に出会ってから、消えていた。どんだけ頭ボサボサでも、どんだけ顔むくんでても、自分のことブサイクなんて、思わなかった。もう絶対的肯定感を、夫に与えてもらってたんだな。鏡の姿がなんであれ、自分は可愛らしさがあると肯定できるようになっていた。それは魔法だったようで、夫の消滅と共に、解けちゃったのが今日なのかもしれない。

恋をして人はきれいになると言うけど、私はずっと、夫に恋してたんだもんね。私の目も鼻もほっぺも髪も体全部、夫がとても好きで褒めてくれていたから。夫はよく、「みんみんはアイドル!」って言ってた。私が可愛い服着てたら、「いいなあ、可愛いなあ」って言って、可愛い髪飾りつけてたら、「いいなあ、みんみん、いいなあ」って言って。何度か、この人は女性の服を着たいのかな?と思って、「スカートとか履きたい?履いていいんだよ」って言ったこともあった。でも、そういうわけではないらしい。ただ、私というマネキンが、可愛いお洋服をきて、可愛い姿になっているのが、羨ましいような、そんな気持ちで「いいなあ」と言っていたようだ。ちょっとした、アイドルとファンみたいな。完全に2人で完結する自己満足で、それ以外の波及性はないんだけど。

夫が褒めてくれた服たちはもう着たくないし、可愛く化粧をしても誰のためという感じだし、まだまだパジャマ生活は続くんだろうな。まあ大きな問題ではないのだけど。ずっと10年以上、夫の口車に乗せられて、自分で自分をアイドル化できていた面もあるから、今日は35歳のおばさんが鏡に映ってて、なんだか悲しくなっちゃったな。

夫が可愛いって言ってくれる自分が好きだったな。