優しくて可愛くてかっこよくて大好きな夫と死別しました

事故か自死か。夫が消えた人生をこれから歩みます。なんて自分が書いてることが信じられない35歳です

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家族に体の不調があって、MRI検査をしたら何か写っていると言われ、専門医に判断を仰ぐ必要があると言われた。疑われた症状をネットで調べると、余命数ヶ月が一般的とのこと。血の気が一気に引いた。そんなことがこれから始まるのかと思うと、過去を向いても、前を向いても、どこもかしこも大変なことになっていて、自分が自分の中でパンクしてしまいそうだった。

それでも、具合の悪さを聞けば聞くほど、私がパンクしてる場合じゃないなと思った。普段の私は、食事のときだけリビングにいて、それ以外の時間は自分の部屋に篭って鬱々考えたり泣いたりしてるけど、昨日は私が家事をやらねばと思って食事の準備をしたり、掃除をしたりした。この家の中で、ちょっと頼もしい人になってた。

午後、専門医の意見を聞きに家族が出かけて行って、夕方に帰ってきた。ドアをあけて第一声、「悪性じゃないみたい」と言われて、体の力が抜けた。家族とハグして泣いた。両親に「よかったね、よかったね」と声をかけた。配偶者を亡くすことの苦しさを、私は知ってしまっているから、こんな言葉がでたのだろう。最終的な診断はまだ確定はしていないけど、気持ちはスッと落ち着いた。

この間、なんとなく、私の頭をかすめていたことがある。こんな試練があるとしたら、それを進めているのは、夫なのかなって。ものすごく怒っているのかな?だからこういう仕打ちなのかな?でも夫はそういうタイプに思えないな。ひょっとして、何か良い方に転じるのかな。

一昨日、大変なことになったと思って眠りについて、夜中に目が覚めた。おばあちゃんが寝ている向こうの壁に、大きなシルエットが2つ。昔、私が空港から旅立つ時に家族に撮ってもらった夫とツーショットの写真で、私の大のお気に入りのものがある。私と夫がちょっと緊張したような表情で映っていて、すごく良い写真。夜中の壁に映っているのは、そのシルエットそのものだった。左側に少し小さな私。右側にひょろんと背の高い夫。なにか、応援のメッセージなのかなあと思った。

それで、昨日起きてから、また考えた。夫はこういうことを画策するタイプではないから、きっと誰かそういうことが得意な人、ちょっと先輩格のいばりんぼな人に、あちらの世界で手取り足取り、教えてもらってるのかな、と。

「オイ、お前気付いてるか?みんみんがだいぶ元気ないぞ。これから負のスパイラルに入っていきそうだけど、なんかやってやった方がいいんじゃないか?」

「そうですね、心配です」

「ショック療法がいいんじゃないか?お前も生きてるとき、みんみんにやられたんだろ?それで苦しませちゃったって悔やんでるぞ。でもああいうことがうまくいくときもあるんだ。間違いじゃないって、お前が見せてやったらどうだ?」

「みんみんへのショック療法ですか?僕はそういうのはちょっと・・・。何すればいいんですか?」

「みんみんが一番失ったら困る人、お前なら誰かわかるだろう?そこをちょっといたずらしたらいい。そうすれば、みんみんは立ち上がるんじゃないか?」

「みんみんが失ったら困る人・・・確かに思い当たります。でも彼女を苦しめることは胸が痛むので、ちょっと考えたいです。」

そんな会話をしてから、しばし考えたものの、スパイラルが止まらない私を見かねて、夫は泣く泣く真っ赤な「実行」ボタンを押して、ことを進めたのかな。

「ほんとにこれ、2日で終わりにできるんですよね?悲しんでる姿が可哀想すぎて、見てられません」

「ああ、2日設定にしてるだろ、だからみんみんが困るのはせいぜい2日。きっと後から勘づくと思うよ。そうした時には、お前の株もあがってるってもんだ。」

なーんて会話を想像した。

この人選にしても、期間にしても、夫らしい設定だなあと思う。私のことをよくわかってるなと思うし、苦しみも最短期間になってるし、何より前向きなメッセージを自発的に生み出す機会をもらった気がする。

夫が亡くなったことに打ちのめされちゃいけない。夫は、困ってる人を見ると私が放っておけないことを、よく知っている。その役割を、これからも果たさなきゃいけないよって、言われている気がした。「みんみん、前を向いてね。悲しんでくれることは嬉しいけど、みんみんが自分を潰すようなことを、僕は願ってないよ」って。

昨日、専門医の朗報を聞いてから気分が明るくなったのだけど、夕飯を食べて、食後の食器を洗いながら、またぐっと悲しみに襲われた。ときどきやってくる、感情の波。これまでは、その波に立ち向かおうとするときに、1人だった。でも、昨日は私1人じゃない、夫だって、こうして生きようとする私を応援してくれてるんだって、思えた。

こうして頭の中で夫に感謝してても伝わらないから、昨日は湯気で曇ったお風呂の窓に、夫に感謝の言葉とイラストを描いておいた。いつも描くと喜んでくれた、ちび夫くんとちびみんみんのイラスト。夫くん、見てくれたかな?感謝してるよ。ありがとう。