優しくて可愛くてかっこよくて大好きな夫と死別しました

事故か自死か。夫が消えた人生をこれから歩みます。なんて自分が書いてることが信じられない35歳です

2人で未来に行く

恋愛って、メールや電話で時間がとられるし、そんな飽きない相手なんていないでしょ、めんどくさっ、とずっと思っていた。そんなに自分が夢中になる相手がこの世の中にいるなんてことが、そもそも想像できなかった。きっと飽きるだろうに、なんで同じ人と毎日連絡を取ったり、出かけたりしなきゃならないんだろう?一人の恋人より、何人も友達がいた方が良くない?と思っていた。

そんな恋愛観を持った私が大学3年生になったとき、2歳年下の夫が新入生として大学構内を歩いていた。その姿を遠目から見て、なぜかわからないのだけど、私は「ピーン!」ときた。松田聖子がいつか電撃婚のときに言っていた、「ビビッ」とくるっていうのは、これなのかと思った。私は、ピーン!だったけどね。擬音語は人それぞれということで。

夫はこの時、人生の中でもとても苦しい経験をしたばかりで、その経験を丸ごと引きずったまま、故郷から上京してきていた。きっと、他の新入生と醸し出すオーラが違ったのだと思う。その後、私たちは紆余曲折というほどのことはないものの、デートを重ね、2ヶ月後から交際が始まった。

夫との会話はいつも楽しくて、面白くて、話題が尽きなかった。交際1年目の私の日記には、おふざけの出来事がダラダラと書かれている日もあれば、まるで討論会のように2人でいろんな話をした様子が書いてある。ニート問題について話したとか、世界平和について話したとか、今となってはどんな会話だったんだろうと思うけど、ニート問題は夫の関心で、世界平和は私の関心だったようなので、きっとどちらか主導でいつも話していたのだと思う。

交際当初は、まだ相手の知らないことの方が多く、きっとお互いに理解しあえていないことや、すれ違いもたくさんあったと思う。でも、それから半年、1年と交際を続けるうちに、自分にはこの人しかいないという確信みたいなものを、お互いにどんどん育んでいったように思う。交際当初のミステリアスな相手もとても魅力的だけど、知れば知るほど魅力が累乗されていく期間も、とても幸せな時間だった。そんなお互いを唯一無二と思う気持ちや、きっと2人が離れることは一生ないのだろうなという気持ちを、それから14年間、ずっと抱いてきた。だから今、突然相手が死んでしまったことや、あれほど大好きな人がいなくなったことで、自分はこれからどうすればよいのだろう?と何度も思う。

今朝の夢で、夫はまだ亡くなったことに気付いていないようだった。私を振り払って喫茶店に1人で入ろうとする夫を追いかけて、「夫くん、私、未来に行っちゃったの」と言った。夫は「え?」と私の目を見る。いつも一緒のはずの2人の間に線を引くようで、こんな言葉では夫を傷つけてしまうと私は慌てた。咄嗟に「だから、夫くんも未来に行くんだよ」と言った。夫はホッとしたような顔をして、私が「また会おうね」と手を差し出すと、夫も手を出して、握手をしてくれた。

一体どうしたら、2人で未来に行けるんだろう。夫はまだ待ってくれてるのにな。