比べてしまう

全然比較しなくていいことなのに、悲しみの比較をする自分がいる。

同じ夫が亡くなるでも、こんな死に方だったら心持ちが違うのになとか、これだったら割り切って前を向く自分を許せるかも、とか。

でも、それってきっと人それぞれだし、隣の芝は青いみたいなことを、この苦しみの境地でもやってるだけなんだろうな。苦しい時は苦しいし、悲しい時は悲しい。異なる悲しみを並べたって、永遠に平行線の比較で、全て並列。1人の人が2つの世界を体験することなんて、まずないから、別の条件だったときにどう感じるかなんて、わからない。

夫が闘病している時は、私だってもうお先が真っ暗で、人生終わったなくらいの気持ちでいた。周囲の健康な家庭を見て、羨ましすぎて苦しくなった。夫と幸せになってやるという固い決意がありながら、もう一方では一人で打ちひしがれていた。あの状況下にあって、希望を持てる人はまずいないと思う。でも、今の私から見たら、あの状況ですら、ものすごく明るい世界。あの世界には、夫がいた。ただ、それだけ。今どう転がっても実現しない、「生きる夫との人生」があった。

でも、あの時の私に対して、もし今の私が「夫が死んだらつらいよ」なんて言っても、今ほどの苦しみと悲しみは、理解できなかったと思う。夫が死ぬことはまったく想定したことがなかったし、それがどんなものか考える必要性も感じてなかった。

それでも今振り返れば、あの時は幸せだった。もっと幸せになるために、いくらでもできることがあった。もっと頑張れる幸せ。夫の支えになれるかもしれない幸せ。あの時は、まもなく夫の死がやってくるなんて、夫からあれだけ苦しみを伝えられても、わかっていなかったな。

夫が亡くなった今、幸せ探しはしようとすら思わないな。しばらく不幸でいい。夫が死んだんだから、幸せなわけないよね。あと、不幸の比較もやめよう。この不幸をもって、このあとどう歩むかは、もう私次第なんだ。夫がいないから。