愛があればよくないか？

あんなにいつも2人で一緒にいた人が、体まるごと居なくなった。最後までアパートに残していた夫のトレードマークのような洋服たちが、まるでもぬけの殻のように見えて、違和感のような、切なさのような、残酷で恐ろしい現実のような、そんなものを突きつけられる。

やっぱり私は、夫がいなくなって、生きる意味とか目的を、失ってしまったな。人生への意味づけ、価値づけは人それぞれだけど、私には夫の存在が基盤にあったんだな。夫が褒めてくれて、応援してくれて、喜んだり、面白がったりしてくれるから、仕事にしても、日々の生活にしても、頑張れたんだなって思う。頑張れたっていうより、夫の存在が、私が頑張る意味そのものでもあったというか。2人の人生が絡み合って、ひとつの人生の幹を作っていた。絡み合うものがなくなって、私の蔦は、今空中に浮いている。どっちにいったら、なにがあるの？って、救いようもなく、うねうねと空間に浮かんでる。

私が夫から離れたら、もしかしたら夫にもそういうことに気づいてもらえたのかな？夫だって、私のことがどこまでも大切だったはずだと、私は勝手に思ってるんだよね。私がもし本気で立ち去ったら、夫は自分が何者なのか、何者になれるのか、なれないのか、そんなくだらない苦悩よりも、大切な人が自分の人生にいることの悦びを、真新しい感動で受け入れることができただろうか。私があまりに既得権益になっていたのではなかろうか。

自分が今あらためて感じることがありすぎて、そんな愛情の大きさや、人生の中の優先順位を、いまさら夫に問いたくなってしまった。自我の苦悩は、くだらなくはない。でも、あなたは私と人生を歩んでいたのに。

夫くん、私がいるだけでは駄目だったのかな。私にできることは何だったのかな。喪失感が強すぎて、私は困り果ててるよ。あなたがいない人生は、考えられないのに、その真っ只中に1人でいるよ。