夫の現れ方
夫が亡くなった日、昔、事故で亡くなった祖父の話を母と祖母がしてくれた。
私も大好きだった祖父は、会社からの帰り道に事故に巻き込まれて亡くなった。
「亡くなった翌日、家の網戸に虫が飛んできて、ずっと離れないの。あれはおじいちゃんだったんじゃないかなあ」
そんな話を聞いた翌朝。
布団で目が覚めて、まだこの絶望の中にいることに二重の絶望を感じて、私は布団で静かに涙を流していた。すると、和室の天井を見上げる私の目の前を、コバエがぷ〜んと飛んだ。
次の瞬間、私はいつもの癖で、ものすごい瞬発力でバッと起き上がり、コバエをしとめてしまった。その瞬間、「あ、やべ、これが夫なのか」と思った。
あのぷ〜んと弱々しく飛んでるコバエは、夫くんだったな。
なんだかおっちょこちょいで、どんくさい感じがすごく夫っぽかった。
「ピシっとせい!!!」と飛びかかっていった私もとても私ぽかった。
お互いを苦しめたところもあるけど、お互いのそういうところが愛おしくもあったよね。
夫くん、頷いてくれてるかな。